AI時代に生き残るための“教育”とは?

作成日:2017/03/01

 

人間の仕事はAIに代替される

人間の仕事はAIに代替される

 

2014年、英国のデロイト社が「英国の仕事のうち35%が、今後20年間でロボットたちに置き換えられる可能性がある」との調査結果を発表しました。日本においても、2015年に野村総合研究所から「10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業が人工知能やロボット等で代替することが可能」とのショッキングな試算結果の発表があったのは記憶に新しいところです。

 

さまざまな有識者や調査機関が「人工知能に置き換わる仕事」のランキングを発表し、メディアを賑やかしていますが、その中でも“コールセンター業務”は代替される仕事の上位によくランキングされています。実際にコールセンター案内係に比較的近い分野で人工知能を導入したところ、6.5人分の人員削減効果があったという具体的事例も出てきており、人間の仕事がAIに代替される日は実はそう遠くない未来なのではないかと感じざるを得なくなります。

 

では、そんなAI時代が到来するにあたり、その中でも生き残っていける人材となるために、今求められている「教育」とはどのようなものなのでしょうか?

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アクティブラーニング授業 「よのなか科」

アクティブラーニング授業 「よのなか科」

 

その答えの一つが、東京都初の民間人校長として杉並区立和田中学校の校長を務め、現在は奈良市立一条高等学校校長である藤原和博氏が実践する「よのなか科」にあるかもしれません。よのなか科では、アクティブラーニングという手法で、教師が一方的に授業を進めるのではなく、生徒自身が自分たちで議論し、テーマについて考え、解決策を探していくという、生徒が主体となった授業をしています。

 

藤原氏は日経ビジネスの対談の中でこのように語っています。

 

-「情報を子供にインプットしていくと、コップから水があふれるように自然に子供たちが意見をいうようになるのか。そうではありません。問われないと意見は形成できないし、まずは間違ってもいいから意見を言ってみないと始まりません(中略)。日本の教育はこういった「意見を育てる」ことには圧倒的に弱いと思う。」

また、藤原氏は次のようにも言っています。

-「実際に公務員を含むビジネスパーソンで、一人で仕事をしている人なんていないですから。実社会で必要なのは、困った時にほかの人や組織の外の人に助けを求め、一緒に解決してくれる人を味方につけ、正解のない解を導く能力。これがこれから大事になっていくんですよ。」

 

 

子どものうちから友人や親以外の大人などの「他者」と議論することで、人それぞれの考え方の違いを知ったり、相手の感情を推測したり、複数の意見をまとめたりするトレーニングをする。これが、これからの時代の学校の在り方だと藤原氏は言います。そして、「同じ部活や委員会の下級生に仕事を割り振る」「ミスをいましめ、後輩の成長を促す」「慕われる・好かれる」「同じ目標に向かってみんなを引っ張っていく」。AI時代には、偏差値では測りきれないこういったスキルの重要性はどんどん高まっていくことでしょう。

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 「教えない授業」

同じく日経ビジネスで藤原氏と対談していた東京都立両国高校の英語教師 山本崇雄氏が実践するアクティブラーニング型授業である「教えない授業」も、今後の教育の在り方に一石を投じている教育の形でしょう。「教えない授業」とは、先生が一方的に、教科書や板書で生徒に教えていくのではなく、生徒が主体になって学ぶ授業です。生徒がペアになって発音の練習をしたり、分からないことを教え合ったりするほか、3学期には生徒が先生役になって授業内容を考え、実際に授業を行う、という手法です。

 

山本氏は、日経ビジネスでの藤原氏との対談の中で、次のように語っています。

-「教えない授業」は、まさに生徒に自立を求める授業です。僕が「教えない授業」を行なうのは、自立し、問題解決能力をつけることが、変化の激しい社会で生き抜く力につながると思うからです。

藤原氏が実践する「よのなか科」、山本氏が実践する「教えない授業」。これら両方ともに共通しているのは、「生徒の主体性を引き出す」「生徒自らが考える力を身に付ける」「偏差値では測れない人間力を創り上げる」ということではないでしょうか。

AI時代に求められる能力とは?

「教えない授業」

総務省が2016年に行った「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」において、興味深い調査結果が出ています。

 

人工知能(AI)の活用が一般化する時代に求められる能力として、特に重要だと考えるものは何かを有識者に対して尋ねたところ、次のような結果になったのです。

1位 「チャレンジ精神や主体性、行動力、洞察力などの人間的資質」

2位 「企画発想力や創造性」

3位 「コミュニケーション能力やコーチングなどの対人関係能力」

4位 「情報収集能力や課題解決能力、論理的思考などの業務遂行能力」

5位 「語学力や理解力、表現力などの基礎的素養」

 

我々親世代が受けていた教育において、優秀な人間の必須技能であった「基礎的素養」や地頭の良さに起因する「業務遂行能力」はAIに代替されうるスキルとされ、その優先順位が下がっています。それに代わりに人間的資質、企画発想力や創造性、対人関係能力といった、まさに偏差値では測れないスキルの重要性が顕著に出る結果となりました。

 

基礎的素養をベースとした業務遂行能力はコンサルタントに求められる資質として当然としても、クライアントの信頼を得る人間力や対人関係能力、そして、以前のコラムでもご紹介したSAPが推進するデザイン思考に代表されるような発想力・企画力など、まさにAI時代を生き抜いていくために必要な教育で得られるスキルは、今後コンサルタントにも更に求められていくことになるでしょう。

 

いかがでしたでしょうか?

 

わたしたち親世代から見ると、自分たちが受けてきた偏差値教育が否定されているような印象も受けるものの、実際は「自分たちの時代にもこんな授業があったな」と感じた方も多いのではないでしょうか?これは子供の教育に限ったことではなく、今後の自分のスキル形成を考えるにあたっても参考になることかもしれません。

 

人間の仕事は人工知能に“とって代わられる”。そんな時代はもう現実のものとして近づいています。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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