起業資金調達のための“事業計画書”の作り方

作成日:2017/02/01

 

起業における事業計画書の重要性

起業における事業計画書の重要性

政府系金融機関である日本政策金融公庫の調査によれば、起業を志す人、いわゆる起業家予備軍の方に、まだ起業していない最大の理由を尋ねたところ「自己資金が不足している」と回答し、その割合は48.4%と半数近くにのぼっているそうです。また、レンタルオフィス「CROSS COOP」の調査では、起業家の39%が銀行からの借入、15%がベンチャーキャピタルからの出資、また同じく15%がエンジェル投資家からの出資による事業資金調達を希望しています。

いずれの調査でも、起業の半分は事業資金不足に悩んでおり、その解決策として金融機関からの借入や投資家などからの出資を必要としているという結果が出ているのです。金融機関や投資家に融資・出資を仰ぐ際に必要になるのが、事業計画書です。融資・出資を引き出すためには、事業の詳細をわかりやすく文書化したプランを提示することが必要です。

そこで今回は、金融機関や投資家に向けた事業計画書を作るためのポイントを簡単にご紹介します。

☆あわせて読みたい

『【PMOコンサルタントとは】つまらない?意味ない?キャリアに使えない?向いている人と今後の将来性・年収を解説!』

『【ITコンサルタントとは】激務?学歴や資格は必要?未経験からなるには?仕事内容や年収、SIerとの違いを解説!』

 

そもそも事業計画書とは?

そもそも事業計画書とは?

事業計画書とは、起業家が事業を立ち上げるに際して、頭の中の考えを整理し、数値化して文章や図表などに落とし込んだものであると言えます。起業を船出に例えるなら、事業計画書は航路図と羅針盤というべき存在で、これなくして目的地にたどり着くことは不可能といっても過言ではありません。また、事業計画書は起業後に「やるべきこと」の優先順位や事業推進の課題を事前に発見するためのチェックリストとしても活用できます。

そのため、事業計画書を作成するにあたっては、最低限、事業コンセプトや事業の出発点、事業の到達点を明らかにしておく必要があります。この検討を怠ったまま作成に着手すると、「このようなビジネスアイデアを考えましたので、概要をまとめてみました」という、独りよがりの事業計画書ができあがることになってしまいかねません。前述のように事業計画書は、事業資金の調達が主目的であり、そのための航路図と羅針盤なので、相手先となる金融機関・投資家が「そのビジネスが有望かどうか」を判断できるような客観的なデータを盛り込みながら構成する必要があります。

すなわち、良い事業計画書とは「どのような商品やサービスで、どのような顧客層・像を対象とし、ライバルに対してどこに競争優位性があるか」を説得力もって語られているもの、そしてそれらの根拠として定量的なマーケティングデータが示されているものにほかなりません。加えていうなら、潜在的な市場から推定される3~5ヶ年間の中期での売上・利益計画、不測の事態に対応するコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)などを描くことも重要な要素になってきます。

☆あわせて読みたい

『【PMOコンサルタントとは】つまらない?意味ない?キャリアに使えない?向いている人と今後の将来性・年収を解説!』

『【ITコンサルタントとは】激務?学歴や資格は必要?未経験からなるには?仕事内容や年収、SIerとの違いを解説!』

 

事業計画書の基本構成

一般的に、事業計画書の本文は次の5つの項目で構成されます。もちろんビジネスによっては、さらに詳しい項目を追加する必要があります。

(1)エグゼクティブサマリー(Executive Summary)

ビジネスプラン全体の骨子を要約したもので、多くはA4の紙1枚から2枚に収めます。ほとんどの金融機関や投資家は、この骨子を読んで魅力を感じれば事業内容の詳細を読むことになると考えられるので、逆にいえば、ここに魅力がなければまったく相手にされない可能性も出てくるという重要な部分です。

(2)事業概要

起業動機や新ビジネスのビジョン、商品・サービスの特徴、ライバルに対する優位性などを簡潔に記します。

(3)事業環境の分析

(2)で記した商品・サービスが既存のどの市場に該当するものなのかという点や、平均客単価、今後の市場環境の変化予測などを定量的データで示します。その上で、自社がどの程度の売上・シェア・ポジションをめざすのかを明らかにします。

(4)事業性の評価

まず自社(Company)が、競合(Competitor)に対してどのような魅力ある商品・サービスで差別化し、顧客(Customer)に提供し続けていくのかを明らかにし、ビジネスの基本的な方法論を示します。

これ加えて、自社の強み・弱み・機会・脅威についてSWOT分析を行う場合もあります。SWOT分析とは、自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を4つのカテゴリーに分けて分析する経営戦略の策定方法であり、具体的には例えば次のような検討を行います。

(ア)「強み」と「機会」がクロスするカテゴリー:どのような積極的攻勢をかけるのか
(イ)「弱み」と「機会」がクロスするカテゴリー:ビジネスチャンスを取りこぼさない対策
(ウ)「強み」と「脅威」がクロスするカテゴリー:自社の強みで脅威を回避する方法
(エ)「弱み」と「脅威」がクロスするカテゴリー:専守防衛または未開拓市場への転進などのリスク対策

(5)経営陣のプロフィールと組織

起業をするにあたってのマネジメントチーム(経営陣)の役割とバックグラウンド(出身)について記載します。起業に対しての評価は、「何をするか?」は当然重要でありますが、投資家によっては「誰がするか?」を重視する場合もありますので、こちらも非常に重要な要素であるといえます。

 

最後の仕上げに「財務計画」を作る

 

事業計画書の作成は以上のことだけで終わりではありません。むしろ、これから説明する財務計画の完成度が、事業資金調達の成否を左右すると言っていいでしょう。

まず、財務計画を策定するにあたっては、最低限、売上・原価・経費見込みから「見込み損益計算書」を作成することが必要です。事業計画書作成の指導書によっては、このとき同時に「見込み貸借対照表」や「見込みキャッシュフロー計算書」を作るように説明している場合もありますが、税務会計の知識や専門のソフトなしで作るのは非常に難しいというのが実情です。

しかし、実際には売上高と売上原価、そして人件費や家賃などの販売管理費を計上して、毎月の収支を示す「見込み損益計算書」、簡単に言えば見込み収支計算書を作るだけで充分というケースがほとんどです。見込み損益計算書ができたら、そこで算出された予想収支を計りながら、投下資金回収までにどのくらいの日時がかかり、起業時の事業資金がいくら必要になるのかを数値で示し、ようやく事業資金調達のための事業計画書が完成となります。

見込み損益計算書を作成する時に注意したいのは、「売上を多く見積もりすぎないこと」と、「売上が予想通りに伸びなかったときの損益分岐点はいくらなのかについても示しておくこと」の2点です。どんな状況になっても確実に損益分岐点以上の売上が見込めることが示せれば、融資・投資のハードルもぐっと下がってくる可能性があるからです。

 

株式会社帝国データバンクが行った「起業に関する実態調査」では、既に起業した人の43.8%が、政府系金融機関や民間金融機関などからの融資金・助成金・出資金によって外部資金の調達をしています。「外部資金の調達が難しそう」と回答した割合は、10代で26.7%、20代で21.1%、30代で16.7%、40代で15.3%であり、年齢が低いほど起業資金の調達に頭を悩ませている現状が伺えますが、実際には半分近くの起業家が外部資金の調達に成功しているわけですから、必要以上に難しく考えることはないと思ってよさそうです。

また、金融機関からの起業資金借入で「調達希望金額の借入を受けることができた」ケースは、

(A)政府系金融機関 6%
(B)地方銀行    4%
(C)信用金庫・信組 8%
(D)都市銀行    7%

となっており、政府系金融機関、地方銀行、信用金庫・信用組合が、比較的積極的に起業資金を融資していることがわかります。仮に資金調達を行わなかったとしても、事業計画を作ってみることは自分自身の頭を整理することにも大いに役に立ちますので、もし事業アイディアがあるようであれば、試しに一度作ってみてはいかがでしょうか?

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

コンサル登録遷移バナー

 

◇こちらの記事もオススメです◇

「独立・起業にも役立つパレートの法則の考え方とは」