これでスッキリ!独立・起業後の年金と健康保険

作成日:2016/08/31

 

自分のことなのに意外と知らない社会保険のコト

 

会社を辞めて独立・起業し、ついに1日24時間すべてが自分のものになったあなた。事業の構想や戦略を練ろう、会いたい人に会いに行こう、などなどやりたいことは山ほどあると思いますが、サラリーマンとして働くことをやめ、フリーランスや個人事業主として働き出すと、それまで会社が片づけてくれていた様々な手続きも自分で処理しなければならなくなります。

個人事業主の場合の確定申告や、法人の場合の税務申告、その前提となる経理処理、取引先との契約締結などはすぐに思い浮かぶかもしれませんが、意外と先延ばしにしてしまいがちなのが、年金と健康保険の手続きです。

なぜ先延ばしにしてしまうのか?

それは・・・複雑そうでよくわからないから!という人が大半なのではないでしょうか。サラリーマン時代には会社が水面下で処理してくれていたのですから、わからないのは当然ですよね。しかし、自分の人生に責任を持つという意味でも、事業の推進に集中するという意味でも、この手続きをズルズルと引き延ばしてしまうのは得策ではありません。家族がいる人の場合は、手続きが遅れると自分だけではなく家族にまで影響が出てしまいます。

今回は、そんな年金と健康保険の手続きについて、個人事業主やフリーランスとして独立した場合、法人を設立して独立した場合に分けて簡単にご紹介します。

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そもそも日本の社会保険制度って?

年金と健康保険といっても、会社勤めをしていると「そういえば給与明細にそういう項目あるなあ」といった程度の認識で、人事部門で給与担当をしている一部の人以外は、毎月しかるべき金額を納めているという自覚すらあまりなく、「独立したら国民年金と国民健康保険に変わるんだよな」と漠然とは思っているものの、詳しくはよくわからない・・・という人も多いのではないでしょうか。

「社会保険」という言葉自体の使われ方も曖昧で、いわゆる「社会保障制度」のうちの一つとしての「社会保険」を指す場合もあれば、「サラリーマンが加入している厚生年金・健康保険・介護保険」を指す場合もあり、さらにはそれに「労災保険」「雇用保険」を加えたものを指す場合もあって、なんだか言葉の定義だけでもうお腹いっぱい・・・と言いたくなりますよね。

厚生労働省の定義では、社会保険とは「人生の様々なリスクに備えて人々があらかじめお金(保険料)を出し合い、実際にリスクに遭遇した人に必要なお金やサービスを支給する仕組み」とされており、現在の日本には、病気やケガに備える「医療保険」、歳をとった時や障がいを負った時などに年金を支給する「年金保険」、仕事上の病気・ケガ・失業等に備える「労働保険」(労災保険・雇用保険)、加齢に伴い介護が必要になった場合の「介護保険」、と大きく四つの保険が存在しています。

このうち「医療保険」と「年金保険」については、「国民皆保険」「国民皆年金」という言葉があるように、国民すべてが加入することになっているのですが、制度のおおもとになっている過去の法律が「企業に雇用されている人」を対象に発足しているため、その名残りで現在も、「会社員向けの健康保険と厚生年金」とそれを補足する「会社員以外の人向けの国民健康保険と国民年金」という構造になっているのです。

では、会社を辞めた場合に具体的にどのような手続きが必要になるのかを、次に見ていきましょう。

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厚生年金・健康保険 VS 国民年金・国民健康保険?

 

年金と健康保険の切り替え手続きは、個人事業主として独立する場合と法人を設立して独立する場合とで異なります。

まず個人事業主として独立する場合ですが、これは非常にわかりやすく、単に「国民年金」と「国民健康保険」に切り替えるだけです。いずれも管轄しているのは住んでいる市区町村なので、退職後に役所へ出向けばまとめて手続きをすることができます。

国民年金と国民健康保険に加入する際、知っておいた方がいいことが二つあります。

一つは、国民年金・国民健康保険には「扶養」という概念がない、ということです。会社員が加入している厚生年金の場合、扶養されている配偶者の保険料は無料になりますが、国民年金の場合は配偶者にも保険料の支払い義務が発生します。健康保険についても、会社員の場合は扶養されている家族の保険料は無料になりますが、国民健康保険の場合は世帯人数に対して保険料が計算されますので、場合によっては会社員の頃よりも負担が大きくなることも考えられます。

もう一つは、国民年金と厚生年金の関係性です。

日本の年金制度は「2階建て」と言われますが、それは「20歳以上の人全員が加入する、保険料が定額の国民年金」を1階部分、「企業に勤める人が加入する、収入に応じて保険料が上がる厚生年金」を2階部分とした表現です。会社勤めをしていると、国民年金は納めていないような感覚に陥ってしまいますが、実際には給与から天引きされる厚生年金保険料に国民年金の保険料も含まれており、将来年金をもらう時、国民年金に加入していた人よりも厚生年金に加入していた人の方が受給額は多くなるのです。

つまり、国民年金と厚生年金は「自営業の人向け」と「会社員向け」のような対の関係ではなく、「基礎部分」と「追加部分」という縦の関係なのです。

これを踏まえ、国では「国民年金基金」という制度を設けています。これは、厚生年金に加入していた会社員の人よりも少額の年金しか受給できない自営業や個人事業主の人などが、将来上乗せして受給できるよう掛金を積み立てるというもので、確定申告の際にはその年に積み立てた全額分の所得控除を受けることができるという、税制上のメリットもある仕組みです。このほか、民間の保険会社でも年金型保険など将来に備える商品が出ていますので、個人事業主として独立・起業する場合は、そういったものを活用した将来設計も考えておくといいかもしれません。

 

法人には厚生年金と健康保険への加入が義務付けられている

法人を設立して独立する場合は、あなた自身は「”前職の会社”から”自分で立ち上げた会社”に転職する」のと同じですので、個人として「厚生年金」と「健康保険」に加入するという点では変わりません。

しかしそのためには、設立した法人として「厚生年金」と「健康保険」に新規加入する、という手続きが必要になります。

「法人は設立したけど当面は自分ひとりの会社だし、売上も少ないし・・・国民年金と国民健康保険じゃだめなの?」と思うかもしれませんが、法人には厚生年金と健康保険への加入が法律で義務付けられており、たとえ社員が自分ひとりであっても加入義務からは免れません。

手続きは、日本年金機構の最寄りの年金事務所で行います。厚生年金と健康保険の保険料は給与に応じて決まるため、あらかじめ、自分を含め加入する従業員全員の給与の金額を決めておかなくてはなりません。

また、届出書類には、必要事項の記入のほか、法人の登記簿謄本の添付や実印の押印、加入する従業員の基礎年金番号の記入や認印の押印も必要になりますので、手続きに行く前に一度管轄の年金事務所に問い合わせてみることをおすすめします。

もちろん、会社を辞めてから自分で法人を設立するまでの間が1日でも空いてしまう時は、その期間だけ、国民年金と国民健康保険への加入が必要になります。その場合、法人として厚生年金・健康保険に加入した後に再度国民年金と国民健康保険の脱退手続きをしなければなりませんので、注意が必要です。

今回は、独立・起業後の年金と健康保険の手続きについてご紹介しました。

サラリーマンとして働いているとよくも悪くもあまり意識することのない社会保険制度ですが、年金・健康保険ともに実は毎月かなりの金額を納めていますし、非常に複雑な手続きを会社が肩代わりしてくれています。独立・起業後、改めてそれを認識して愕然としないよう、これから独立を考えている方は会社を辞める前にぜひ一度、大まかにでも情報収集しておくといいのではないでしょうか。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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